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【dbts2025 レポート】ビジネス観点でAIをみる〜技術経営 基礎講座3つのトピック〜

AI ビジネス 初心者向け
【dbts2025 レポート】ビジネス観点でAIをみる〜技術経営 基礎講座3つのトピック〜

こんにちは、コンサルティング本部 片向です。
db tech showcase 2025 2日目のPA14のセッションである「ビジネス観点でAIをみる〜技術経営 基礎講座3つのトピック〜」のレポートをお届けします。

セッション概要

本セッションでは、ビジネスとAIの関係をビジネスと技術経営の観点から考えます(東京大学工学系大学院「技術経営戦略専攻」の授業の一部をミニ講義でご紹介します)
(1)産業世界観・産業歴史観の変容
・CPSとDIME論
・データ・情報・知識とインテリジェンス
・情報社会からCPS社会へ
・「化け社会」の問題
(2):モノづくりにおけるAIとロボット
・シン温故知新
・価値形成の循環化
・技術発明型AIの育成と活用
・AIがロボットに実装されると何がおこるか
(3)イノベーションの「バトンゾーン」
・モデル転換とバトンゾーン
・ブリコラージュ的対応とエンジニアリング的対応 等

スピーカー名:
特定非営利活動法人 産学連携推進機構
理事長
妹尾 堅一郎 様

はじめに

昨今AIについて様々な議論がなされているかと思いますが、エンジニアの観点ではなくビジネスの観点から考えた場合どのような世界が見えてくるのか。本セッションでは、技術経営の観点から3つのトピックからAIについて講演いただきました。

セッション内容

①産業世界観と産業歴史観の変容
DIME論によれば、世界の中心概念は約100年周期で物質(19世紀)、エネルギー(20世紀)、情報(21世紀)と変遷してきました。現代は、あらゆるモノやエネルギーに情報タグが付与されるCPS/DIMEの世界が到来したと言えます。社会は「情報化社会」から「情報社会」へ、さらに「CPS化社会」から「CPS社会」へと移行しており、どの視点で見るかによって問題が変化する「化け社会」の様相を呈しています。

②モノづくりと「AI・ロボット」
センサー、アクチュエーター、コンピューターの3つが組み合わさることでロボットが構成されます。このロボットにAIが実装されることで、自律的かつ即時的な学習能力を持つようになります。これは「AIに手足がついた」とも「ロボットに頭脳が搭載された」とも表現でき、モノづくりの現場は、人の技能継承(ステップ1)、ロボットによる組み立て(ステップ2)を経て、ロボットが自律的に学習し作業する段階(ステップ3)へと進化しています。さらに、AI自身が技術発明を行う可能性も秘めています。

③イノベーションへの「バトンゾーン」と「ターゲット」
イノベーションのターゲットは、新規事業創出やブルーオーシャン戦略から、循環型経済であるサーキュラーエコノミーへと移り変わっています。リデュース・リユース・リサイクルの3Rからサーキュラーエコノミーへの転換は、ビジネスモデルの変革を促します。例えば、Apple社がiPhone14を修理しやすい設計にしたことや、iPhoneの自動分解ロボットを開発していることは、その一例です。このような流れの中で、「モノ戻し」(モノを崩し、選び、運び、戻すプロセス)が新たなイノベーションの重要なターゲットとなっています。

まとめ

  1. AIは、産業史や社会構造の変革という大きな文脈で捉える必要がある。
  2. DIME論によれば、21世紀は「情報」が中心の世界観であり、物理世界とサイバー空間が融合したCPS(サイバーフィジカルシステム)社会へと移行している。
  3. モノづくりの現場では、AIを搭載したロボットが自律的に学習して作業する時代が到来しつつある。
  4. イノベーションの新たなターゲットとしてサーキュラーエコノミーが注目され、製品を分解・選別して資源に戻す「モノ戻し」の技術が重要性を増している。

聴講した感想

AIを技術的な側面だけでなく、産業革命から続く歴史的な流れや、DIME論、CPSといったマクロな視点から解説いただいたことで、現代社会が直面している変化の全体像を深く理解することができた。特に、AIとロボット技術の進化が、サーキュラーエコノミーという新たな経済モデルの中で「モノ戻し」というイノベーションターゲットを生み出していると知り面白いと感じた。これからのビジネスを考える上で、目先の技術に留まらず、社会全体のパラダイムシフトを捉えた戦略構築がいかに重要であるかを痛感することができた。

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