db tech showcase

dbtsブログ

このエントリーをはてなブックマークに追加

【dbts2025 レポート】6100万QPSを支える分散型データベースの挑戦:AliPayの事例から

ビジネス ユーザー事例 運用ノウハウ
【dbts2025 レポート】6100万QPSを支える分散型データベースの挑戦:AliPayの事例から

こんにちは、開発本部吉﨑です。
db tech showcase 2025 1日目のB2のセッションである「6100万QPSを支える分散型データベースの挑戦:AliPayの事例から」のレポートをお届けします。

セッション概要

OceanBaseはオープンソースの分散型データベースです。これまで全世界で2000以上のクライアントにサービスを提供し、OLTP、リアルタイムOLAP、AI向けベクトル検索処理などのハイブリッドワークロードをサポートしてきました。低コスト・低レイテンシが特徴のOceanBaseは、TPC-CおよびTPC-Hで世界記録を更新しています。
本セッションでは、OceanBaseのアーキテクチャを簡単にご紹介した後に、世界最大規模のECセールイベント「ダブルイレブン」でAliPayが直面した、6100万QPSへのエラスティック・スケーリング、都市部でのディザスタリカバリ、耐障害性の確保、大規模データベースのメンテナンスといった技術的課題にどのように対処したのかについて、CTOが具体的にご紹介します。

スピーカー名:
OceanBase
CTO
Charlie Yang 様

はじめに

本セッションでは、オープンソースの分散型データベース「OceanBase」のCTOであるCharlie Yang氏が登壇。OLTP、リアルタイムOLAP、ベクトル検索などハイブリッドなワークロードを低コストで支えるOceanBaseのアーキテクチャを紹介しました。

セッション内容

中心的な事例は、世界最大級の決済プラットフォームAliPayでの導入事例です。特に、中国でECが最も活況となる「ダブルイレブン」(11月11日の大規模セール)において、同社が直面した6100万QPSという膨大なリクエストへの対処、都市レベルでのディザスタリカバリ、大規模データベースの運用保守といった、極めて高い要求に対する技術的な挑戦とその解決策が具体的に語られました。

AliPayでは、従来のOracle構成からOceanBaseへ移行したことで、12年連続で「ダブルイレブン」をサービス無停止で乗り切り、2億7500万ドル以上のストレージコスト削減を達成しました。 
技術的には、自動的な負荷分散による柔軟なスケールアウト/スケールダウンを実現しながら、ノードやデータセンター、さらには都市レベルの障害が発生しても、RPO=0(データ損失ゼロ)、RTO8秒未満という極めて高い耐障害性を持っていることが示されました。

OceanBaseはOracle互換/MySQL互換を備えており、さらにOLTPだけでなくHBase互換のNoSQLやリアルタイム分析など、多様なニーズに一つの基盤で応えられる点が大きな強みで安全なデータ移行を支援するツールも提供されていると述べています。

まとめ

  1. マルチテナント機能
    • テナントごとにMySQLまたはOracle互換モードを選択可能。
  2. AliPayでの導入実績
    • 12年間の無停止稼働を達成。
    • 大幅なコスト削減に成功。
  3. 技術的な優位性
    • 災害復旧:RPO=0(データ損失ゼロ)、RTO8秒未満。
    • 自動でのスケールアウト/ダウン機能を提供。
  4. 多様なワークロードへの対応
    • OLTP(オンライントランザクション処理)。
    • NoSQLやリアルタイム分析などのハイブリッドワークロード。
  5. 移行サポート
    • 既存システムからの移行を支援するツールも整備。

聴講した感想

AliPayの事例で示された性能値や災害復旧の仕様もさることながら、単一の基盤でMySQLとOracleの互換モードを両立させて様々なワークロードに対応している点には驚きました。データベース製品はどちらかに特化することが多い中、この柔軟性は、多様なシステムが混在する大企業の移行課題に対する、非常に現実的で強力なアプローチだと感じました。

一覧に戻る